2013年 年頭のご挨拶 ―核軍縮の機運を今一度高める年に―
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年は、「核兵器のない世界」に向けた機運を今一度確固としたものとする意味で、極めて重要な年となるでしょう。2011年2月に新STARTが発効したことは、ひとつの重要な成果であったものの、その後の核軍縮の展望が開けず、核軍縮は国際政治の舞台の後方に退いてしまったとの指摘さえなされました。とはいえ、昨年は、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI:2010年9月の国連総会の機会に日豪主導で立ち上げた核軍縮・不拡散分野における地域横断的な有志国グループ)の外相会合が2度にわたって開かれ、本年5月にジュネーブで開催される核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第2回準備委員会に向け、NPDIとして6本の作業文書((1)包括的核実験禁止条約(CTBT),(2)非戦略核,(3)核兵器の役割低減,(4)輸出管理,(5)非核兵器地帯,(6)核兵器国への保障措置拡大)を提出することに合意しており、その作成が進められています。
また、昨年は、核不拡散・核軍縮国際委員会(いわゆる川口・エバンス委員会)のフォローアップの一環として結成されたアジア太平洋地域の有志による「アジア太平洋核不拡散・核軍縮リーダーシップ・ネットワーク(APLN)」(エバンス元オーストラリア外相が座長)の第2回目の会合がシンガポールで開かれ、核セキュリティ、透明性及び核軍縮に関する声明を発表しました。私もその一員として微力ながら貢献しております。本年は、そうした提言を、具体的な形にして核軍縮・不拡散の機運を盛り上げていくことが求められています。
核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第2回準備委員会会合は、そのひとつの試金石となることでしょう。国際社会が核軍縮・不拡散の促進、その先にある「核兵器のない世界」への明確な道筋を一致して示すことができるかが問われています。米露によるSTART後継条約の批准と実際の戦略核戦力の削減、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉の早期開始、北朝鮮およびイランの核問題の解決に向けた一層の取り組み、核テロ防止のための施策の強化は、本年の最重要課題として位置付けられます。
もう一つの最重要課題として、包括的核実験禁止条約(CTBT)を忘れることはできません。CTBTは、1996年9月に署名に開放され、2012年12月現在、183か国が署名し、うち157か国が批准しています。しかし、CTBTの発効には、条約の附属書2に列挙される核技術を持つ特定の44か国がすべてCTBTを批准しなければならないとされ(第14条)ており、未だ、米国を含む8か国の批准が得られていません。CTBT批准を重要政策のひとつに掲げてきた米国のオバマ大統領が再選されたことで、米国がいかなるタイミングで批准プロセスを進めるのか注目されるところです。
昨年は、当センターが事務局を務めるCTBT国内運用体制発足10年目にあたり、10月から11月にかけて、当センターがホスト(米国務省共催)した第一回東アジア地域NDC(国内データセンター)ワークショップ、原子力研究開発機構(JAEA)がホストした国際希ガス実験ワークショップ、海洋研究開発機構(JAMSTEC)がホストした水中音波ワークショップが、それぞれCTBTO準備委員会との共催で実施されました。また、トート事務局長や、ゼルボIDC(国際データセンター)局長(昨年10月に次期事務局長に選出)やマリサエルIMS(国際監視制度)局長といったCTBTO準備委員会幹部が相次ぎ訪日し、日本とCTBTOとの協力強化を印象付ける年となりました。CTBTの技術作業部会では、2014年のヨルダンでの統合野外演習もにらんで、現地査察関係の協議や、現地査察関連の研修・事前訓練が本格化しています。国内運用体制は、2013年、昨年の積極的な流れを受けて、核爆発実験探知の模擬試験や各種ワークショップ、研修等を通じて、国内運用体制の整備と検証システムの能力向上に一層取り組んでいく所存です。
また、当センターは1昨年に広島がスタートした「国際平和拠点ひろしま構想」の策定・実施にも参画しております。本年は、この一環として、各国の核軍縮・核不拡散分野でのパーフォーマンスを評価する事業と東アジア地域で核軍縮を推進する環境作りを考えるラウンドテーブルを立ち上げる予定です。
国際社会が直面するのは、核兵器を巡る問題だけではありません。生物・化学兵器を保有する国はいまだになくなっておらず、また、シリアなど、国内の政治的混乱の中で使用される可能性も指摘されています。化学兵器禁止条約(CWC)の普遍化、あるいは生物兵器禁止条約(BWC)強化のための実効的な措置の積み重ねは、そうした問題の解決に向けて引き続き重要です。紛争地域で実際に多くの被害を出してきた対人地雷、小型武器、クラスター弾についても、日本をはじめとして国際社会が処理・破壊、被害者支援を着実に進めていかなければなりません。さらに通常兵器全般の不正取引などを規制する武器貿易条約の交渉も大きな課題です。
軍縮・不拡散促進センターとしても、CTBT国内運用体制の整備促進、軍縮・不拡散問題に関する調査研究、国内外の有識者やシンクタンクなどとの交流、諸会合への参加、軍縮教育の継続と拡充、APLN、「国際平和拠点ひろしま構想」などを通じて、軍縮・不拡散を重視する日本がイニシアティブを発揮できるよう、また軍縮・不拡散の大きな進展に寄与すべく、本年も積極的に貢献していきたいと考えています。
本年も皆様のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
2013年1月
軍縮・不拡散促進センター
所長 阿部信泰












