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研究報告書|研究成果

原子力平和利用戦略に係る調査・研究(2001年度〜2003年度)

平成15年度文部科学省委託調査研究報告書
「原子力の平和利用戦略に係る調査・研究」最終報告書

原子力の平和利用戦略
― 将来の世代に負の遺産を残さないために ―

平成18年1月
ホームページへの掲載によせて

平成18年1月11日付けの朝日新聞朝刊は「北極が激変-気温の大幅上昇、永久凍土の溶解…」と題する記事を載せ、異変メカニズムを究明する必要があるとしている。記事によればロシアのヤクーツクでは平均気温が100年間で2.5℃上昇し、永久凍土の溶解が進み、森林地帯の崩壊が急速に広がっている。地球規模のCO2排出量は年率1.8〜1.9%で増加を続けており、1970年に320ppmであった大気中のCO2濃度は2000年には370ppmまで上昇している。生態系の環境変化に対する適応性を考慮すると、その期間を問わず平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えなければならず、かつ上昇率を0.1℃/10年以下に抑える必要がある。地球表面の平均気温は過去100年間に0.6℃上昇(極地近傍の平均気温は地球表面平均気温の数倍高くなる)に止まっているが、1950年から1993年の間の地球表面平均気温上昇率はすでに0.2℃/10年に達しており、環境変化への適応能力の低い種の中に絶滅の危惧が心配される動植物が増加している。地球温暖化を起こす主要因の一つが大気中のCO2濃度の上昇であることを疑う余地は無い。温暖化による環境破壊は既に始まっており、メカニズムの解明を待っては居られない。早急に大気中のCO2濃度を抑えるあらゆる措置をとる必要がある。

解決策は省エネの促進と大気中に排出するCO2の量を抑える以外に無い。持続可能な経済発展を維持するために地球規模で消費するエネルギーは石油換算量で50年後には2000年の2.5倍、100年後には6倍に達すると予想されている。この消費量に見合うエネルギーを省エネ単独で賄うことは無理な話であり、温暖化防止の切り札として奨励されている太陽光発電等にその供給能力は無い。また、クリーンで無限に存在するエネルギーとして水素の活用が挙げられているが、水素の製造に化石燃料を使用しては意味が無い。今後、2倍、4倍そして6倍と伸びていくであろう地球規模のエネルギー需要を賄い、大気中のCO2濃度の増加を抑える代替エネルギー源としては運転中にCO2を発生しない原子力の活用以外に道は無い。原子力を用いて水素を製造する研究開発も進んでおり、余剰電力から水素を作ることも出来る。今後増加するエネルギー需要の内、民生用のエネルギーは太陽光発電、風力発電等で補完し、産業用そして輸送用のエネルギーは原子力をベースとした電力および水素燃料に移行する必要がある。

現在、原子力は広く人々に受け入れられてはいない。原子力の活用を促すには核不拡散体制の整備を進め、原子炉そして放射性廃棄物の処理処分等に係る安全性を確立し、人々の理解を得る必要がある。原子力の利点は廃棄物が少なく、安全な処理処分の方法が立証されるまで保管管理が可能なことである。100万kwの石油火力発電所が排出するCO2の年間発生量は650万トンにもなるが、原子力発電所で消費する低濃縮ウランの量は年間21トンに過ぎず、使用済核燃料集合体の量にしても33トンに過ぎない。その量は火力発電所で排出するCO2と比べ、重量比で約10万分の1、体積比は100億分の1でしかない。早急に原子力にかかる技術開発と安全性の検証を進め、経済発展を続けている開発途上国に原子炉を導入することができる環境を整備する必要がある。

我が国は、非核兵器国の中で唯一再処理とウラン235の濃縮を行っている原子力平和利用の先進国であり、NPT体制を中心とした核不拡散体制の整備を率先して進め、平和利用核物質と資機材が核兵器開発に転用されていないことを検証するIAEA保障措置の有効性を立証した国でもある。21世紀の世界経済成長を支える主要なエネルギー源として原子力の役割を示し、モデルを示すことが出来るのは日本である。

本報告書は、電源開発促進対策特別会計法に基づく文部科学省からの委託研究として平成13年度から3年をかけて当センターが行った調査研究「原子力の平和利用戦略に係る調査研究」の成果をとりまとめたものである。地球温暖化と原子力平和利用に係る問題を廃棄物の影響とその処理処分等の観点から、将来の世代に負の遺産を残さないエネルギー政策と地球環境の維持について検討しており、持続可能な経済成長を維持し、地球環境を維持するエネルギー源の確保の方法について検討している。本報告書を公開することにより原子力利用に係る有益な意見および情報が得られ、原子力平和利用戦略の立案に資すると考えられるため、文部科学省の承認を得て、全文をホーム・ページに掲載することとした。

財団法人日本国際問題研究所
軍縮・不拡散促進センター
所 長 須藤 隆也
客員研究員 小山 謹二

原子力平和利用戦略に係る調査・研究(2001年度〜2003年度)
(一括ファイル)
(2,682KB)
表紙・目次 (21KB)
(30KB)
エグゼクティブサマリー
「原子力の平和利用戦略 ―将来の世代に負の遺産を残さないために―」
(121KB)
第1章 はじめに (37KB)
第2章 今なぜ原子力か (1,072KB)
第3章 地球規模のエネルギー・環境政策が必要 (293KB)
第4章 原子力をめぐる欧米の情勢 (198KB)
第5章 原子力の早期導入が必要 (345KB)
第6章 GEN-4原子力システム (1,141KB)
第7章 GEN-4核燃料サイクルシステム (359KB)
第8章 核不拡散措置と核拡散抵抗性 (1978KB)
第9章 リスクアナリシス (100KB)
Annex-1 地球温暖化は止められるか (422KB)
Annex-2 予想される地球温暖化 (945KB)
Annex-3 エネルギー源の持つ主な課題 (751KB)
Annex-4 人材育成について (351KB)
以上のダウンロードファイルは全てPDFで提供しております。
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