研究成果
文献紹介|研究成果

Anoush Ehteshami『イラン新保守派の興隆とその影響』

1.序論

1−1 国内の動向

 イランは、2003年の核計画発覚と2005年の新保守派を大統領に就任させた選挙という2つの衝撃以来、西側諸国にとっては頭痛の種として立ちはだかり続けている。
 2005年のマフムド・アフマディネジャードの大統領選当選は、イラン革命から25年経った現在でも、イランが根深く分極した社会であることを示している。彼の勝利は、イラン人の多くに反改革派への強い支持があることのみならず、新保守派に対して、富の再配分、貧困の解決、政治腐敗の排斥、国家のイスラム性の維持などの国民の要求に応え得るのではないかとの期待があることを意味している。

1−2 永続的国益

 イランの政策は、国内的要請と同時にイランをとりまく地域情勢の産物である。したがって、イランにおける新保守運動の動向のみを注視するのではなく、イランの中東地域における伝統的な国益と近年の国内潮流との関係を理解することに加え、中東の安定のためにその両方の要素に基づいて行動できるようになることが我々にとって極めて大切である。
 この報告書では、アフマディネジャード大統領のもとでのイランにおけるネオコン台頭の詳細と現実、その国内的・対外的影響、そしてイランにおける社会・経済・外交政策問題に関する一般大衆とエリート両方における将来潮流を分析する。この報告書では、保守派、改革派、新保守派といった政治陣営の間で共有され、どの陣営や政党が政権についたとしてもイランの行動に影響を与えるであろう永続的な地政学的国益に関して、米国がバランスの取れた長期的・戦略的な関与をイランに対して続けていくことの必要性について説得力のある論拠を示し、結論としたい。

2.改革に対する選挙上の障壁

2-1 操られた制度

 保守が支配する護憲評議会は8172人の見込み候補者のうち、2500人以上を第七議会選挙への登録を禁止した後、厳重な圧力のもとで、数百人の応募を復帰させた。禁止された候補者の多くは改革主義者であり、選挙において保守は150議席以上を勝ち取ったのに対し、改革陣営はわずかに60議席を確保したに過ぎなかった。内務省の検査プロセスにおいて最も打撃を受けたのは、イラン最大の改革主義政党であるイラン・イスラム参加戦線(IIPF)と、イラン・イスラーム革命聖戦士機構(IRMO)である。テヘランにおいてIIPFとIRMOから立候補した全ての候補者と、イラン全土で登録されたIIPFの候補者200人のうち190人が不適格とされた。彼らの多くは、ハタミ大統領のもとで重要な役割を果たした国会議員や閣僚であった。

2−2 急進的保守主義に対する国民的支持

 2005年6月の大統領選挙におけるアフマディネジャードの圧倒的勝利は、改革派の候補者の大規模な排除のみならず、イランにおける公民権を奪われた非常に宗教的な多くの市民の意思に起因するものであった。アフマディネジャードの選挙はイラン政治における分水嶺であったと言える。
 他方で、アフマディネジャードの勝利は、イランが革命から四半世紀後の現代においても根深く分極した社会に留まっていることを示した。アフマディネジャードの勝利は、イラン人の多くが改革主義者の態度に強く反対していることを示したのである。

3.急進的ポピュリズムの外交政策への影響

 アフマディネジャード大統領の外交政策課題は、イランの外交路線の硬化を示している。

3−1 シオニズムとイスラエル

 イラン大統領によるイスラエル打倒の呼びかけは大失敗に終わったが、イラン政府の政策転換は、周辺諸国からは脅威として受け止められた。

3−2 核兵器

 アフマディネジャードに言わせれば、「核問題は解決済み」であり、もはや国際的な圧力の対象となるべき問題ではないと主張している。イランの核政策は、国内の権限やNPT4条に基づくとともに、地政学上の重要性の冷静な計算に基づいており、イランの政策決定者による近隣諸国からの脅威における最悪のシナリオへの現実的な理解と認識によるものである。

4.地域安全保障の背景:デタントと対立の間での振幅

 今後、積極的な発展が見られる可能性はあるものの、国際社会はイランの地域的な役割に関する懸念と関連して、イランの核活動に当分のあいだ悩まされるであろう。GCC諸国は、イランの広範囲にわたる顕著な影響力に脅威を感じる一方で、彼らを潜在的に除外したグランドバーゲンに関するテヘランとワシントンの和解がもたらす結果もまたおそれている。

5.強硬派ポピュリズムと地域的・国内的現実

 イラン内においても、新保守派による経済政策の誤り、インフレや失業率増加、政治的文化的自由の制限などに対する反発は、様々な形で表面化している。他方で、政権は、あらゆる批判を拒絶しつつ、アフマディネジャードの大統領としての職務の成功を強調することに満足しているようだ。

6.最終的分析:デタントという西側政策の不可避性

 西側にとっては、本当のところ問いは一つだけである。すなわち、派閥主義や最高指導者によって代表される伝統的保守主義、アフマディネジャードに代表されるポピュリスト新保守主義の並立というイランの国内状況は普遍であるということに鑑みて、変更可能な変数は何かということである。この問に対する明白な解答は、中東を取り巻く国際環境こそが、米国とその友好国・同盟国によって肯定的に形成可能な変数であるというものである。有意な変化のためには地域環境の安定化が必要であり、また、西側諸国は、次期選挙で西側が望む指導者が登場することを期待するのではなく、現在のイランの指導者と交渉する必要があるのだという事実を受け入れねばならない。
 どこに米国の次期政権のアプローチを委ねるかは重大な問題であり、イランの軽率と行過ぎた行為にもかかわらず、EU方式の二者間における批判的な対話以外に、この戦略的ながら激しやすい地域における米国のより広い利益を前進させそうなものはない。そうした勇敢な行動の結果として、近年イラクとその他の場所における米国の行動にともなった地域の「安全保障問題化(securitization)」のために見過ごされてきたイランにおける改革擁護勢力の再活性化がもたされるかも知れない。